地震に備える本当に必要な8つのもの|被災経験からつくる防災チェックリスト

家族で地震への備えと非常持ち出し袋を確認している様子 体験・レポート

地震は、住んでいる地域や季節を問わず、いつ起きるか分かりません。大きな揺れを「遠くの出来事」で終わらせず、元気なうちに、わが家の備えを一度確かめてみませんか。

大きな地震が起きるたび、防災用品を一式買わなければと焦りがちです。しかし、各地の被災経験者の声をたどると、必要なのは豪華な「防災セット」よりも、トイレ、水、明かり、電源、薬など、止まるとすぐ困る生活用品でした。

この記事では、各地の地震を経験した方々の体験談と公的な防災資料をもとに、子どもから高齢者まで使いやすい備えを8項目に絞ります。

時間がない方へ
まず次の「地震への備えチェックリスト」で不足を確認してください。家族に持病がある、歩行が難しい、ペットがいる方は「8. 家族ごとの代わりがない物」へ。車中泊や在宅避難を考えている方は該当の章を読み、最後の「今夜15分でできるテスト」を一つ実行すれば、今日の備えは前進します。

まず確認:地震への備えチェックリスト

家にある物はチェックし、足りない物だけを補いましょう。数量は家族の人数や体調に合わせて調整してください。

  • ☐ 携帯トイレ(1人1週間35回分を目安)
  • ☐ 飲料水(1人1日3リットル、最低3日・可能なら1週間分)
    ※透析治療などで水分制限がある方は医療機関の指示を優先
  • ☐ ヘッドライト、LEDランタン、予備電池
  • ☐ モバイルバッテリー、充電ケーブル、携帯ラジオ
  • ☐ 常備薬、お薬手帳、病名・薬・緊急時対応を書いた医療情報メモ
  • ☐ 底の厚い靴、作業用手袋、マスク、ホイッスル
  • ☐ 調理不要の食べ物、衛生用品、ごみ袋
  • ☐ 透析患者・持病がある方・乳幼児・高齢者・女性・ペットなど家族固有の物
  • ☐ 自宅・車・避難所のどこで過ごすか、家族の判断基準

まず安全を優先してください
強い揺れの直後は、余震、火災、崩れた建物、割れたガラスに注意が必要です。避難情報や津波情報が出ている地域では、持ち物を集めるより避難を優先してください。

家族で地震用の持ち出し袋を確認している様子

被災経験者の声に共通したこと

2016年の熊本地震を経験した方への取材では、被災後に足した物として水、非常食、簡易トイレ、明かりや電源などが挙げられています。能登半島地震の体験談でも、支援物資が届くまで数日かかったことや、余震を避けて車内で過ごした経験が語られています。

また、東日本大震災で避難所を含む複数の場所へ避難した防災士は、「全部を網羅する」のではなく、家族の生活や避難環境に合わせて見直すことが大切だと話しています。

つまり、万人に同じ完成品を買うよりも、わが家で止まると困るものを、実際に使える状態にしておくことが備えの中心です。

1. 携帯トイレ――食料より先に確認したい

断水しても便器に水を流せばよい、とは限りません。排水管が壊れていると、汚水が逆流したり、下の階へ漏れたりするおそれがあります。安全が確認できるまでは流さず、便器に袋を取り付ける携帯トイレを使います。

国の資料では、成人の平均排泄回数を1日5回とし、1人あたり1週間35回分の備蓄を推奨しています。4人家族なら140回分です。

  • ☐ 凝固剤と排便袋がセットの携帯トイレ
  • ☐ 厚手で中身が見えにくいごみ袋
  • ☐ 使い捨て手袋、消臭袋、ウェットティッシュ
  • ☐ 使用後の袋を保管する、ふた付き容器

買ったままにせず、一度は説明書を読み、未使用の袋で便器への取り付け方を練習しておきましょう。

2. 飲料水と給水袋――重い水は自宅に置く

飲料水は1人1日3リットルが一般的な目安です。最低3日分、可能なら1週間分を、普段使いしながら補充するローリングストックにすると無理がありません。

透析治療などで水分制限がある方は、この一般的な目安ではなく、主治医・透析施設から受けた指示を優先してください。

一方、避難用リュックに1週間分の水を詰めると重すぎます。持ち出し袋には500mlを1~2本程度とし、残りは自宅備蓄へ。給水所から運ぶための折りたたみ給水袋も役立ちます。

乳幼児、持病がある方、暑い時期は必要量が増える場合があります。家族に合わせて余裕を持たせてください。

3. ヘッドライトとランタン――両手を空ける

停電した室内には、割れたガラスや倒れた家具があるかもしれません。懐中電灯より、両手が使えるヘッドライトが移動や片付けに向いています。部屋全体を照らすランタンも1台あると、食事やトイレの不安が減ります。

  • ☐ 寝室の手が届く場所にヘッドライトと靴
  • ☐ 家族が集まる場所にLEDランタン
  • ☐ 本体とは別に予備電池

ろうそくは火災の原因になるため、照明にはLEDを選びましょう。

4. モバイルバッテリー、充電ケーブル、ラジオ

スマートフォンは、安否確認、地図、避難情報の確認に欠かせません。ただし、基地局の混雑や停電も起こり得ます。

  • ☐ 充電済みのモバイルバッテリー
  • ☐ 家族の端末に合う短い充電ケーブル
  • ☐ 乾電池式または手回し式のラジオ
  • ☐ 予備の乾電池

容量の数字だけでなく、毎月1回、実際にスマートフォンを充電できるか試してください。乾電池は使用期限も確認します。

地震に備えて用意した携帯トイレ、水、明かり、電源、薬など

5. 常備薬と「薬の情報」

薬は支援物資で同じ物がすぐ手に入るとは限りません。普段の薬、眼鏡、補聴器の電池など、代わりが利かない物を優先します。

  • ☐ 常備薬と処方薬(可能な範囲で余裕を持つ)
  • ☐ お薬手帳、または処方内容を撮影した画像
  • ☐ 眼鏡、コンタクト用品、補聴器用電池
  • ☐ 絆創膏、ガーゼ、消毒用品

薬の保管量や方法は自己判断で増やさず、医師や薬剤師に相談してください。

6. 靴、手袋、マスク、ホイッスル

揺れの後に素足で歩くのは危険です。寝室に、底が厚く脱げにくい靴を置いておきます。片付けには作業用手袋、ほこり対策にはマスクを使います。

閉じ込められたとき、声を出し続けると体力を消耗します。小さなホイッスルを枕元やバッグに付けておくと、居場所を知らせる助けになります。

7. 調理不要の食べ物と衛生用品

非常食は保存期間だけでなく、家族が食べられる物かが大切です。最初の1日は、加熱や大量の水を必要としない物が便利です。

  • ☐ 普段食べている缶詰、レトルト、栄養補助食品
  • ☐ アレルギーや年齢に合う食品
  • ☐ 紙皿、ラップ、キッチンペーパー
  • ☐ ウェットティッシュ、液体歯磨き、マスク、生理用品

カセットコンロは在宅避難で役立ちますが、換気できない場所や車内、テント内では使わないでください。

8. 家族ごとの「代わりがない物」

最後に、一般的な防災セットでは抜けやすい物を足します。

  • 乳幼児:液体ミルク、哺乳瓶、紙おむつ、離乳食、母子手帳の情報
  • 子ども:連絡先カード、小さなおやつ、安心できる玩具
  • 高齢者:入れ歯用品、杖、補聴器用電池、介護用品
  • 女性:生理用品、防犯ブザー、着替え用の目隠し
  • ペット:フード、水、薬、リード、排泄用品、迷子対策

透析治療を受けている方

人工透析は継続して受ける必要があり、災害で普段の施設が使えない場合は代わりの施設や移動手段の確保が必要です。一般向けの水・食事の目安をそのまま使わず、平常時に主治医や透析施設と相談して決めた内容を優先してください。

  • ☐ 透析患者カード(透析条件、通院施設、緊急連絡先を記載)
  • ☐ お薬手帳・保険証・身体障害者手帳・特定疾病療養証のコピー
  • ☐ 処方された常用薬(可能なら1週間分を、医師・薬剤師と相談)
  • ☐ 主治医から指示された非常食と水分管理のメモ
  • ☐ 通院施設が使えない場合の連絡先、代替施設、集合場所、移動方法
  • ☐ スマートフォンの予備電源と、連絡先を紙に書いた控え

発災後は、まず身の安全を確保してから、かかりつけの透析施設へ連絡します。連絡できない場合は、地域の保健所や指定された拠点病院へ相談し、日本透析医会災害時情報ネットワークで受け入れ情報を確認します。透析の延期、水分量、薬、食事を自己判断で変更せず、医療機関の指示に従ってください。

薬や治療を中断できない持病がある方

透析に限らず、喘息、心臓病、高血圧、糖尿病、てんかんなどは、災害時に薬や治療が途切れると重症化することがあります。薬を自己判断で減らす・中止する・家族と分け合うことは避け、主治医や薬剤師と決めた治療を続けてください。

  • ☐ 病名、薬の名前・量・服用時刻、薬のアレルギーを紙に記録する
  • ☐ お薬手帳、診察券、医療手帳を持ち出し袋へ。内容はスマートフォンにも保存する
  • ☐ かかりつけ医・薬局と、受診できない場合の相談先を記録する
  • ☐ 主治医・薬剤師と相談した予備薬を、期限と保管条件を守って準備する
  • ☐ 発作時に使う薬と手順を、本人以外の家族も確認する
  • ☐ 注射針、吸入器具、測定器、消毒用品など薬以外の必需品もそろえる
  • ☐ 避難先では受付や医療スタッフへ、持病と治療継続の必要性を早めに伝える

喘息がある方

毎日使う長期管理薬と、発作時に使う吸入薬を中断しないことが基本です。吸入デバイス、スペーサー、ネブライザーを使う方は、本体・消耗品・予備電源も一緒に準備します。粉じん、煙、たばこ、冷気は悪化要因になるため、がれきや煙から離れ、マスクと換気で曝露を減らします。周囲の人にも喘息であることを伝えましょう。

主治医から渡された発作時の指示に従って吸入しても呼吸困難が改善しない、会話が難しい、唇が青紫色になる、意識がおかしい場合は、ためらわず119番または現地の医療スタッフへ助けを求めてください。

心臓病・高血圧がある方

降圧薬、心不全・狭心症・不整脈などの薬は、原則として処方どおり継続します。ニトログリセリンなどの発作時薬は、処方されている方だけが医師の指示どおり使用してください。水分や塩分の量は病状によって異なるため、一般向けの備蓄記事をそのまま当てはめず、平常時に主治医から災害時の目安を確認しておきます。

胸の痛み・圧迫感、急な息苦しさ、失神、冷や汗、夜間の呼吸困難、急なむくみや体重増加がある場合は、早めに医療スタッフへ相談します。強い胸痛や呼吸困難が続く場合は119番を利用してください。ペースメーカーやICDを使用している方は、患者手帳や機器カードも携帯します。

在宅酸素・人工呼吸器などを使う方

医療機器の名称、メーカー、電源、内蔵・外部バッテリーの持続時間、酸素ボンベへの切り替え方法を、医療機関・訪問看護・機器事業者と事前に確認します。予備電源を充電し、停電時の連絡先と移送先も決めてください。酸素使用中は火災を防ぐため、たばこやストーブなどの火気を近づけません。

薬が足りないと気づいたら、なくなるまで待たない
避難所の救護所、自治体、医療機関、薬局へ早めに相談します。お薬手帳を失っても受診をあきらめず、氏名、生年月日、持病、覚えている薬の情報を伝えてください。

足の不自由な高齢者・車椅子利用者

自力での避難が難しい場合は、持ち物を増やすだけでなく、「誰と、どの経路で、どこへ避難するか」を事前に決めることが大切です。市区町村へ、避難行動要支援者名簿や個別避難計画の対象になるか相談しましょう。

  • ☐ 避難を手伝う人と、連絡できない場合の代わりの人
  • ☐ 段差や狭い道を避けた避難経路、利用できる避難先
  • ☐ 杖、歩行器、車椅子をすぐ手が届く場所に置く
  • ☐ 電動車椅子の充電器・予備電源、機器の連絡先
  • ☐ 常備薬、介護用品、携帯トイレ、尿取りパッド
  • ☐ 必要な介助方法と緊急連絡先を書いたヘルプカード

揺れている間は身の安全を優先し、車椅子では前かがみになって重心を下げます。自分で移動できないときは、安全な場所から周囲へ支援を求めてください。移乗や階段、トイレ介助を、経験のない人が一人で無理に行うと事故につながることがあります。本人に必要な支援を確認し、家族・介護職・地域の支援者と避難訓練をしておきましょう。

ペットと暮らしている家庭

「同行避難」は、飼い主がペットと一緒に安全な場所まで避難することです。避難所で人とペットが同じ部屋で過ごせるという意味ではありません。受け入れ場所や飼育ルールは自治体・避難所によって異なるため、事前確認が必要です。

  • ☐ フードと水を少なくとも5日分、できれば7日分以上
  • ☐ 常用薬、療法食、診療記録、かかりつけ動物病院の連絡先
  • ☐ キャリーバッグまたはケージ、首輪、予備のリード
  • ☐ 飼い主の連絡先、迷子札、マイクロチップ情報
  • ☐ ペットと飼い主が一緒に写った写真
  • ☐ トイレ用品、排泄物処理袋、タオル、ガムテープ
  • ☐ 避難所に入れない場合の一時預け先

平常時からキャリーやケージに入る練習をし、犬はリードで安全に歩けるようにします。まず人の安全を確保したうえで、逃走やけがを防ぎながら同行避難してください。

連絡先や薬の情報には個人情報が含まれます。必要な範囲にとどめ、紛失しにくい場所へ入れましょう。

車中泊・在宅避難も選択肢――安全なら避難所へ行かない判断も

避難とは「避難所へ行くこと」だけではなく、災害の危険から命を守ることです。自宅が安全な場所にあり、建物にも危険がなく、火災・津波・土砂災害などの恐れがない人まで、無理に避難所へ移動する必要はありません。安全な自宅での在宅避難、親戚・知人宅、ホテル、自治体が認めた車中泊場所などを組み合わせる「分散避難」も選択肢です。

ただし、強い揺れの後は見えない建物損傷や余震があります。家屋の傾き、柱や壁の大きな亀裂、ドアが開かない、ガス臭、周囲の火災、津波・土砂災害の危険がある場合は、その場にとどまらず安全な場所へ移動してください。自治体の避難情報、津波警報、建物の応急危険度判定を優先します。

車中泊が役立つ場面

車中泊は、避難所の音や人目から距離を取り、家族だけの空間を確保しやすいため、プライバシーを守り、心理的な負担を軽くできる場合があります。乳幼児、ペット、感覚過敏がある方、集団生活が難しい方にも選択肢になり得ます。

施錠できる車内は、不特定多数が集まる空間での接触を減らせますが、犯罪を確実に防げるわけではありません。孤立した暗い場所を避け、自治体や施設が指定する明るく管理された駐車場所を利用し、ドアを施錠して貴重品を外から見えない場所へ置きます。女性や子どもを一人にせず、家族に場所を共有し、避難所の受付にも車中泊していることを伝えましょう。

安全な車中泊チェックリスト

  • ☐ 津波・浸水・土砂災害・落下物の危険がない指定場所を選ぶ
  • ☐ 避難所や自治体へ居場所と人数を登録し、支援情報を受け取る
  • ☐ ドアを施錠し、貴重品を見えない場所へ置く
  • ☐ シートをできるだけ平らにし、長時間同じ姿勢を続けない
  • ☐ 定期的に歩く・足首を動かす。水分制限がない方は水分もとる
  • ☐ 透析治療などで水分制限がある方は、主治医・透析施設の指示を優先する
  • ☐ エンジンをかけたまま眠らない。車内で燃焼器具や発電機を使わない
  • ☐ 暑さ・寒さ対策を行い、体調が悪ければ医療・保健スタッフへ相談する
  • ☐ 携帯トイレ、照明、充電手段、目隠し、耳栓を用意する

狭い車内で長時間動かないと、深部静脈血栓症・肺塞栓症、いわゆるエコノミークラス症候群の危険が高まります。排気ガスの流入による一酸化炭素中毒、夏の熱中症、冬の低体温症にも注意が必要です。特に高齢者、妊婦、乳幼児、持病がある方は、車中泊を長期化させず、可能なら安全な屋内や福祉避難所、ホテルなどへ移ることを検討してください。

在宅避難や車中泊でも、避難所で食料・水・物資を受け取れる場合があります。支援から漏れないよう、自治体や最寄りの避難所へ居場所を知らせ、定期的に情報を確認しましょう。

持ち出し袋と自宅備蓄は分ける

持ち出し袋は、命を守って避難するための最小限です。水や食料を詰め込みすぎると、重くて持てません。

持ち出し袋には、水500mlを1~2本、携帯トイレ数回分、ヘッドライト、モバイルバッテリー、薬、手袋、マスク、ホイッスルなどを。自宅備蓄には、1週間分の水・食料・携帯トイレ、ランタン、衛生用品、カセットコンロなどを置きます。

リュックを背負って玄関まで歩き、階段を安全に下りられる重さか試してください。子どもや高齢者に無理をさせず、家族で分担します。

停電を想定し、家族でヘッドライトやラジオを試している様子

今夜15分でできる「使えるか」テスト

  1. 家の照明を使わず、ヘッドライトとランタンを点ける
  2. モバイルバッテリーでスマートフォンを充電する
  3. 携帯トイレの袋を便器に取り付ける練習をする(使用はしなくてよい)
  4. 持ち出し袋を背負って玄関まで歩く
  5. 家族の集合場所と、災害用伝言ダイヤル171を確認する

小学生にも「ライトの場所」「靴を履いてから歩く」「勝手に外へ飛び出さない」の3つを覚えてもらうと、家族全員の備えになります。

まとめ――買う前に、一度使ってみる

本当に必要なのは、高価な道具を増やすことではありません。トイレ、水、明かり、電源、薬、足元の安全を、家族全員が使える状態にすることです。

今日そろわない物があっても、まずは家にあるライトを枕元へ置く、モバイルバッテリーを充電する、水と薬の残量を確認する。そこから始めれば、明日の安心は少しずつ増やせます。

参考にした情報・体験談

コメント

タイトルとURLをコピーしました